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子どもたちが集う
魅力ある図書館のつくり方
  ボーネルンドの絨毯の上で、のびのびと本を読む子や、机で学習する子など、思い思いに過ごせる図書館。低くて白い棚は大手家具店「IKEA」のもの。約3500冊の蔵書の中には、子どもたちが選書した本もあり「これ私が選んだ本だ!」と喜ぶ姿も見られるとか。蔵書管理はオンライン化され、個別・学年別の読書傾向も一発サーチが可能。
 
山形市立
西小学校
本誌でもおなじみの児童文学評論家の赤木かん子さんは、学校図書館のリフォームや、調べ学習の授業のために全国各地を飛びまわっています。県内では昨年の夏、山形市立西小学校の図書館を大改装。一体どんな図書館が完成したのか知りたくて、山形市へ向かいました。
 
1977年創立。昨年「けやき図書館大改修」。今年11月8日、9日に行われた「第33回東北地区学校図書館研究大会山形大会」の小学校部会の会場となり、公開授業を行った。
児童数470名、学級数19。学校長・冨樫彰三。
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山形市立西小学校(以下、西小)は、市内西部の自然が息づく住宅街の中にあります。こちらの小学校では、昨年の夏に図書館を大改装し、以来、図書館活用を重点に置いた教育研究を進めています。改装のノウハウを指導したのは、本誌スプーンズガイドのページでもおなじみの児童文学評論家・赤木かん子さん。今回、やまがた絵本クラブの加藤美穂子さんとのご縁で、西小への訪問が実現しました。
  まず始めに図書館改装に至った経緯を、教務主任の松野俊彦先生に伺いました。「今年、本校が創立30周年を迎えるにあたって、子どもたちに何かを残したいと考えていた時、地域の方から『図書館は昔から変わらないね』という声がありました。それをきっかけに図書館のあり方を見直して、子どもたちが集まるような楽しい図書館を作ろうという計画が持ち上がりました」。そこでさっそく西小では、加藤美穂子さんを通じて赤木かん子さんに改装の指導を依頼。子どもたちには図書館にまつわるアンケート調査を行い、その結果「明るく楽しく、本が探しやすくて貸し借りが便利な図書館」が理想であることが分かりました。当時、西小の図書館は約1万冊にもおよぶ蔵書が書棚に収められていましたが、子どもたちからは「暗くて探しにくい」という意見とともに、毎回カードに記入する貸出返却作業も「面倒」「低学年には難しい」などの声が寄せられました。「『探しにくい=不要な本が多い』という赤木さんの指摘の通り、中には20年間まったく借りられていない本もありました」。そこで新しい図書館づくりの考え方として、(1)古く、ほとんど動いていない本は廃棄する (2)調べ学習用の図書は情報の正確さをよく確かめ、古い情報のものは廃棄する (3)同じ本で冊数が多いものは、検討の上、数冊程度にする (4)入口からすべての本が見渡せるようにする (5)全校生が利用しやすいようにする といった項目を定め、本格的な改装に乗り出しました。
  夏休みを利用して行われた作業は、本の運び出しから館内清掃、ペンキ塗りなど、先生やPTA、ボランティアの手で進められました。図書館に置く本を決める選書の際には、かん子さんが来校。「選ばれた本は3500冊。当初の3分の1になりました」。残りの作業は、配架と装飾。本にはイラスト別の分類シールを貼り、書棚にも同様の分類パネルを掲示して、イラストを照合して本を返す仕組みにしました。また、貸出返却作業をバーコード化してスムーズにし、先生たちにも子どもの読書傾向がひと目で分かるシステムも取り入れました。
  こうして完成した図書館は、明るいオフホワイトの背景に、ビタミンカラーのカーテンとカラフルなパネルや絨毯が映える広々とした空間。「子どもたちは『本が増えたみたい』と言っています。実際は減ったのに増えたと感じるのは、読みたいと思う本が目につきやすくなったからでしょうね。貸出利用数も飛躍的に伸びました」と松野先生。最近では、子どもたちに選書をさせたり、読書指導にアニマシオンやリテラチャーサークルなどの手法を取り入れたりと、図書館教育への取り組みも広がりをみせています。また、PTAの読み聞かせが功を奏し、子どもたちの本への親しみも深まりました。「読書を通して豊かな心を育みたい」図書館教育に長く携わってきた冨樫彰三校長先生の思いが、新しい西小の図書館のあり方とともに、実を結ぼうとしています。
 

赤木かん子さんによる
調べ学習の授業を実施
パワフルエキサイティング、面白さに定評のある赤木かん子さんの授業。子ども用の百科事典を使って、「なにを、どんなふうに調べればわかるの?」という基礎をレクチャーしました。

西は読書センター、東は
情報センターの2つの図書館
こちらは改修前の図書館。撤去した書棚と本の一部は、空き教室を活用した「東図書館」に移動。改修した「西図書館」と併せ、それぞれに機能しています。

子どもの目線で考える
本を選び、楽しませる工夫
本には補強のためのラバーを貼り、かん子さん特製の分類シールとバーコードを表示。配架も、本の背表紙を見せるのではなく面出しにして、子どもたちの目を引く工夫がされています。



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調べ学習の基礎の基礎
―だれでもできる
  赤木かん子の魔法の図書館学―
  赤木かん子/塩谷京子
しらべる力をそだてる授業!
  「図書館へ行こう(全三巻)」
   
本のしくみや百科事典の使い方、レポートの書き方などを左ページで説明し、右ページのワークで書いて覚える2段構えの1冊。
■ポプラ社 2,100円(税込)
  かん子さんの調べ学習の授業ライヴと、司書教諭の塩谷京子さんによる記録・解説を綴った本書は、先生や指導者必携。
■ポプラ社 1,575円(税込)
  すがわらけいこさんのかわいいイラストで、図書館学を分かりやすく説いた調べ学習の新刊。読み聞かせにもおすすめです。
■ポプラ社 4,725円(揃価格・税込)

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高橋江里子=取材・文
text by Takahashi Eriko


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