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 Home > バックナンバー > 「光子さんのごっつぉ彩時記」 > 154 かゆずし

月刊「SPOON」2005年4月号掲載

酒田のお正月に
欠かせなかったという
ごっつぉ、かゆずし。
上品な柚子の香りが
ゆったりと往時へ誘います。
青塚光子=料理
cooking by Aotsuka Mitsuko
三浦栄子=取材・文
text by Miura Eiko
板垣洋介=写真
photograph by Itagaki Yosuke

イラスト=佐藤定雄
題字=齊藤千加子

旬の手作り実感シリーズ……154
 

かゆずし
【材料】
米2合、餅米1合、麹3合、
日本酒90cc、塩数の子、ギンナン、
人参、刻み昆布、柚子、塩
 かゆずしは、酒田のお正月に欠かせない御馳走で、1992年12月号でご紹介しましたが、近年、NHKのハイビジョンで本間美術館本館を舞台に、かゆずしを含む、光子さんのごっつぉが紹介されてから、お問い合わせが多かったため、光子さんにお願いして再度作っていただきました。このかゆずしは、ご飯や魚を自然発酵させた、いわゆる「馴れずし」を簡略化したものです。「これは三軒茶屋の私の実家で、正月には必ず作てたなんども、子供の頃は、やだぐでの。んめどは思わねがったの。でも最近なてがら懐かしぐなて、口を頼りに思い出して作り始めだな。私がだの年代でも、そう言えば、食せらっだけの、でも作りがだだばわがらねっ
て、みんな言うもんだけ」。

 まずは米2合に餅米1合を合わせて柔らかめに炊き、人肌に冷ましてから、麹3合をほぐしたものと、日本酒90ccを全体に混ぜ合わせます。そして炊飯ジャーで6〜7時間ぐらい保温してから、外に出して、自然に冷まします。「昔はこたつさ入れだり、湯せんしたりしてだんども、ジャーさ入れだらって思いついだな。甘みが出で、柔らかくなるまでの。あんまり長時間保温すっど、色変わてしまうさげの」。

 中にまぜる具は、塩味が少し残ったぐらいの数の子を1センチほどに切ったもの(これは、折れ数の子で充分)。色よく空いりしたギンナン。梅型に形どり、さっと塩茹でした薄切りの人参。刻み昆布を2センチぐらいに切ったもの。そして細かく刻んだ柚子の皮。その分量はそれぞれのお好みで。

 かゆずしがすっかり冷めたら、柚子以外の具を混ぜ、味を見ます。数の子の塩加減によって違いますが、ここで、麹のうまみを助ける程度の塩を少々加えます。たくさんはいりません。そして、最後に柚子をまんべんなく散らして、できあがり。すぐ食べるよりも、そのまま室温で(暖房のないところで)3日ほどおいて、ゆっくりと発酵させると、味が馴染んで、よりおいしくなります。「中さ入れる具は、その家で違うど思うんども、数の子とかギンナンは、いっぺ入った方がおいしいの。私の実家でも、戦争中は、数の子ねさげだが、作らねがったもんだけ。それから、ギンナンの薄皮取りは容易でねものだんども、いい方法があっての。ひびを入れて厚手の鍋で空いりして、殻取ったギンナンどご、もう一度、小鍋さ戻して、全体の半分被るくらいの塩水入れで、木ベラでいるように擦ると、薄皮が簡単に取れんな。これはぜひ試してみでくださいの」。麹の力で、ご飯と鮭などの魚を発酵させて、いただく馴れずしは、手間のかかる贅沢なごっつぉ。光子さんのかゆずしは色どりが美しく、味あんばいが抜群で、酒田のおふくろの味として伝えたい逸品です。



■「光子さんのごっつぉ彩時記」バックナンバー


春のちらし寿司
2004/04【142】
チンゲン菜と
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2004/05【143】
鶏レバーと
こんにゃくの煮込み

2004/06【144】
ニンジンと
牛肉の甘辛炒め

2004/07【145】
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2004/08【146】
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2004/09【147】
かぼちゃと
さつまいものグラタン

2004/10【148】
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2004/11【149】
鮭のおこわ
2004/12【150】
鮭のテリーヌ
2005/01【151】
はまぐりのクリーム煮
2005/02【152】
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2005/03【153】
かゆずし
2005/04【154】
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2005/05【155】
孟宗汁
2005/06【156】
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2005/07【157】
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2005/08【158】

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